④片頭痛には特効薬があります
片頭痛には特効薬があります。
前回までに頭痛の患者さんの2人に1人は頭の筋肉が痛い緊張型頭痛で、3人に1人は頭の血管が痛い片頭痛であること、緊張型頭痛は動いても痛みは悪化しない頭痛で、片頭痛は動くと痛みが悪化する頭痛ということを説明しました。今回はこの動くと痛みが悪化するために日常生活に対しての支障度が高い片頭痛の治療について説明します。
片頭痛の治療は薬による治療が主体となりますが、薬以外の治療法もあります。薬による治療は痛くなった時の治療と、痛くならないようにする予防療法があります。片頭痛は完全に治すことは難しい病気です。しかし適切な治療で発作の頻度を減らしたり症状を軽くすることができます。
今回は薬による治療の中で、痛くなった時(片頭痛発作時)の治療について述べます。発作時の治療の目的は速やかに頭痛を消失させることです。軽度から中等度の頭痛には一般的な鎮痛薬(普通の痛み止め)を用います。これが効かなかったり重度の頭痛となり寝込んでしまう場合には、トリプタン系の薬剤という片頭痛の特効薬があります。薬をうまく使うと寝込むような頭痛をなくすことができるのですが、片頭痛発作時の治療のポイントはタイミングをはずさないことです。片頭痛では普通の鎮痛薬は早めに(前回お話しした予兆期または前兆の初期までに)飲まないと効果がないことが多いです。「頭痛くらいで薬を飲むと体に悪い!」と思っていて、我慢している方がおられますが、月に数回であれば、薬を飲んで楽になるのであれば薬を飲むことは悪いことではないと思います。薬を飲んでも効かなかったり、量が増えてくる場合は治療法が間違っていると考え、専門医の受診をお勧めします。
片頭痛の特効薬といわれるトリプタンも、飲むタイミングが大切です。「じっとしていて痛みを感じる」、または、「頭をゆすって痛みを感じる」ちょっと手前くらいの時期までに飲まないと効果が十分得られないといわれています。早く飲みすぎても同様です。
片頭痛の患者さんは早い人では小学生から病んでいる人もおり、長い付き合いをしていて、自分なりの「治療のこつ」を知っている方が多いです。月に数回、薬を飲むと仕事や学校を休むことなく暮らせる方は今の治療でよいと思います。稀ですが、タイミングを逃すと頭痛がひどくなってしまうので早めに薬を飲む癖がついてしまい毎日のように頭痛薬を飲んでいらっしゃる方がいます。薬物乱用頭痛といい薬を飲むことで頭痛が起こりやすくなっている病態で片頭痛の患者さんに多いと言われています。月に15日以上、頭痛薬を飲んでいる方は薬物乱用頭痛の可能性があるので頭痛の専門医の診察を受けることをお勧めします。
普段の頭痛は、頭を締めつけられるような、緊張型頭痛の痛みで、「動いていると忘れてしまうような頭痛」ですが、年に数回、動けなくなるようなひどい頭痛発作をきたす方は、意外に多いです。このような方は緊張型頭痛と片頭痛を両方持っている方と考えられます。日常生活で負担が重なったために普段の頭痛と違う「吐いて寝込むような」ひどい頭痛になってしまったという印象です。体が悲鳴を上げていると思って、体を休めるサインと思ったほうがよいかもしれません。年に数回ですが、頭痛で寝込んでしまう方はトリプタン系の薬剤をうまく使うと寝込まないで済むかもしれません。