①頭痛は病気です
頭痛は病気である。
昔、と言っても私が医師になった30年ほど前は、頭痛は病気というより「なまけ病」であるといった風潮が、世間にも我々医師の間にもありました。1963年にアメリカで頭痛にはいろいろな種類があり、治療法も異なるということが発表されていましたが、一般に普及するのには時間がかかりました。1988年に新しく頭痛の分類、診断法が国際的な機関によって作られ、片頭痛に対する特効薬が開発されたこともあり、頭痛の治療が飛躍的に進歩し始めました。今では、頭痛は病気であり、治療をすることによって日常生活に支障をきたすような痛みを減らしたり、痛みを予防することができるようになっています。
今は頭痛に対しての専門医というのもあります。
●人生を変えてしまうような頭痛は少ない。
頭痛外来を受診される患者さんで「頭が痛いので何とかしてほしい」という患者さんは少なく、9割近い患者さんは心配で来院されています。「最近頭痛がするのだけれど、何か悪い病気じゃないか?」とか、「一晩寝ると治っていた頭痛が2-3日続いているから心配になった」という方が多いです。頭痛がした場合、98%の方は、脳が痛いわけではありません。脳を包んでいる頭の脳以外の部分が痛いのです。具体的には頭の筋肉、血管、神経、目、鼻、耳が痛んでいるのです。皆さん「脳腫瘍があるのではないか?」、「クモ膜下出血が心配だ」とおっしゃいますが、頭痛のみの症状の場合、悪い病気の可能性は少ないことが多いです。しかし、全くないわけではないので、今日は簡単な見分け方をご説明します。
●クモ膜下出血
心配のタネで一番多いのがこれです。この頭痛には2つの特徴があります。
①今まで経験したことのないようなとんでもない激しい頭痛が、
②突然起こって続いている。
この2つの特徴があったら、すぐに脳外科のある病院に行くべきと思います。多くの患者さんは「頭の後ろを、バットでぶん殴られたよう」な痛みと言っています。オシッコをちびったり、意識がなくなってしまうこともあります。血のつながった人(親、兄弟、叔父,叔母など)にくも膜下出血がいる方は、一度MRI検査をされることをお勧めします。
●脳腫瘍
脳腫瘍には悪性のものと良性のものがあり、できる場所によって症状も多種多彩です。一般的には腫瘍ができることによって脳の中の圧(脳圧)が上がってしまうので頭痛が出てきます。この頭痛の特徴は、①朝、頭が痛くて目が覚める。②手足がしびれる、力が入らないなどの、何らかの異常な症状を伴い、それが進行性に悪化してくる。と言われています。しかし、症状ではわからないことも多いので、何か気にかかる方は一度は脳の検査(可能であればMRI)をお勧めしています。
年齢の若い方、いつもと違う頭痛が起きた方、初めて頭痛が起きた方は、すぐに診断できるCTをお勧めしますが、30歳以降の方はMRA、MRIを予約して検査されることが良いと考えております。